子どもが勉強しない本当の理由|やる気ではなく習慣と経験がすべてだった
子どもが勉強しないのは、やる気の問題ではない
勉強しなさいと言っても動かない。励ましても続かない。できるだけ楽しくしているのに、机に向かわない。 こうした悩みは、家庭でも学校でもよく起こります。
ただ、現場で多くの子どもを見てきた立場から言うと、子どもが勉強しない理由は性格や根性では説明できません。 決定的なのは、勉強する習慣があるかどうか、そして勉強が苦しくないものとして経験できているかどうかです。 つまり、やる気は原因というより結果になりやすい。
この記事では、心理学・行動科学の一次情報(研究知見)と、教育現場での体験(観察できた差分)を組み合わせて、 子どもが勉強しない本当の理由を整理します。 読み終える頃には、やる気を引き出すよりも、行動が起きる仕組みを作る方が早いことが見えてきます。
子どもはやる気が出たら勉強するのではなく、習慣があるときに勉強する
勉強しないと言われていた子が、ある日ふっと机に向かう場面があります。 そのタイミングを丁寧に見ると、気分が乗ったからでも、説教が効いたからでもないことが多い。 過去に、勉強が日常の一部だった経験があるとき、子どもは自然に再開しやすいのです。
逆に、勉強が苦しい体験として積み上がっている場合、叱る・励ます・ご褒美で釣る、といった短期の刺激では動きません。 行動は意志で決まるというより、経験の蓄積と環境で決まりやすい。 これは習慣形成の考え方と一致します。
なお、習慣は短期間で固定されるものではありません。 習慣形成に関する研究では、行動が習慣として定着するまでの期間は個人差が大きく、平均でおよそ66日と報告されています。 今日やる気が出るかどうかより、日常の設計の方が強い理由がここにあります。
楽しい授業だけでは続かない。効いていたのは楽しく学ぶ経験の反復だった
若い頃、僕は勉強したくなる授業づくりを目標にしていました。 授業を面白くすれば、学習意欲が高まり、家庭学習も続くはずだ。そう考えていたからです。
ところが、現実に効いていたのは、授業の面白さそのものというより、楽しく学ぶ経験を日常の中で繰り返すことでした。 一回の授業が面白いかどうか以上に、分からない状態が否定されない、やり直しても大丈夫、少しできたら次へ行ける、 そうした経験が積み重なった子は、学習への抵抗が下がり、戻ってきやすい。
これは自己決定理論(Self-Determination Theory)で語られる、 自律性(自分で選べている感覚)・有能感(できそうだと思える感覚)・関係性(安心できるつながり)という観点とも整合します。 楽しさは入口として重要ですが、続けるためには安心と見通しの方が効きます。
努力すれば誰でも身につく、が嘘になる瞬間がある
ここは誤解を恐れずに書きます。 現場では、楽しく取り組んでいても、何百回と練習しても、結果として身につかないケースが実際にあります。
僕自身、漢字の学習を大量に繰り返させた経験があります。 子どもは授業の流れもあり、前向きに取り組んでいました。 それでも、結局その子は十分に定着しないまま次の学年を迎えました。 後から振り返ると、学習障害(LD)の可能性が考えられる事例だったと感じています。
重要なのは、ここで努力不足と決めつけるほど、学習は壊れるという点です。 LDなどの発達特性が関係する場合、同じ方法の反復は成果につながりにくいことがあります。 なお、診断や判断は医療・専門機関が行うものであり、この記事は医療的判断を行うものではありません。 ただ、努力という言葉だけで片づかない現実があることは、教育の入口で隠すべきではないと考えています。
楽しいことだけをさせると、楽しいことしかしない集団ができる
もうひとつ、はっきり書いておきたい失敗があります。 楽しい学習を重視しすぎた結果、楽しいことしかしないクラスを作ってしまったことがありました。 当時は善意でしたが、学習の枠組みが弱くなると、子どもは当然ながら負荷の低い方へ流れます。
ここで必要なのは、楽しさと構造の両立です。 自由は大事ですが、自由だけでは自律は育ちません。 何をやるか、いつやるか、どこまでやるか、できなかったらどう戻るか。 こうした見通しがあるほど、子どもは安心して取り組めます。
準備・切り替え・片付けで止まる子は、甘えではなく別の要因があることが多い
勉強以前に、準備ができない、切り替えられない、片付けで止まる。 こうした子は、やる気がないと誤解されやすい。
ただ現場の感覚としては、この領域でつまずく子の多くは、意欲よりも発達特性の影響が疑われることが多い。 逆に、特性がない場合は、そこまで大きな支援がなくても比較的スムーズに回りやすい。
だからこそ、勉強しないを根性の問題にしない方がいい。 まずは準備・切り替え・片付けのどこで止まっているのかを観察し、支援の形を変える。 ここが解けると、学習以前の詰まりが抜け、行動が起きやすくなります。
よくある質問(Q&A)
Q. 子どもはどんなときに勉強しますか?
A. やる気が出たときではなく、勉強が日常の一部として回っていたときです。 勉強しても苦しくならなかった経験がある子ほど、再開が早い傾向があります。 習慣形成に関する研究でも、行動は短期の気分より継続の設計に左右されやすいとされています(Lally et al., 2010)。
Q. やる気がないのは性格の問題ですか?
A. 多くの場合、性格よりも経験と環境の問題です。 勉強がうまくいかない経験が重なると、挑戦を避ける行動が強化されます。 まずは、できなかった経験が積み上がっていないか、やり直しの余地があるかを見直す方が現実的です。
Q. 楽しく学ばせれば勉強するようになりますか?
A. 楽しさは必要ですが、それだけでは続きません。 楽しいことだけを優先すると、負荷のある学習を避ける流れが強まりやすい。 楽しさに加えて、見通しと枠組み(何を、いつ、どこまで)をセットで設計すると安定します。
Q. 努力すれば誰でもできるようになりますか?
A. 残念ながら、そうとは限りません。 発達特性(例:学習障害LD)の影響が疑われる場合、同じ練習の反復では成果が出にくいことがあります。 その場合は方法を変える、負荷を変える、支援を入れることが必要です。 なお、診断や判断は専門家に確認が必要です。
Q. 準備や切り替えができないのは甘えですか?
A. 甘えで説明できないケースが多いです。 準備・切り替え・片付けで止まり続ける場合、意欲ではなく実行機能など別の要因が関係している可能性があります。 まずはどこで止まっているのかを具体的に観察し、支援の形を変える方が改善しやすいです。
まとめ:やる気を追うより、習慣と経験を設計した方が早い
子どもが勉強しない理由は、やる気不足では説明できません。 勉強する習慣があるか、勉強を苦しくないものとして経験できているか、学習以前の準備や切り替えで詰まっていないか。 こうした要素が揃ったとき、子どもは自然に動きやすくなります。
もし今、家庭や教室で勉強しないが起きているなら、意志を責めるより先に仕組みを疑う。 その方が、子どもも大人も消耗せずに前へ進めます。
参考文献・出典(一次情報)
- Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: Modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology.
- Deci, E. L., Koestner, R., & Ryan, R. M. (1999). A meta-analytic review of experiments examining the effects of extrinsic rewards on intrinsic motivation. Psychological Bulletin.
- Diamond, A. (2013). Executive functions. Annual Review of Psychology.
- 文部科学省:特別支援教育に関する資料(学習障害LDを含む) https://www.mext.go.jp/
注意:発達障害や診断に関する判断は専門家に確認が必要です。本記事は医療的判断を目的としません。
📩 LINE登録で、教育テンプレや子育てTipsを毎週お届け!
習慣づくりややる気を引き出すための具体策が詰まっています。