意味調べを”授業”にする――文脈理解・説明力集団心理を活かす方法
なぜ、忘れ物が多い人は何度注意しても減らないのか?──脳科学と行動心理で読み解く“記憶ミス”の正体

■ 「また忘れてるじゃん…」という毎日
「昨日も言ったよね?」
「なんでまたカバンに入れないの?」
「いつになったら直るの、これ?」
子どもの忘れ物が続くと、つい口調もきつくなる。
しかも、それが1回や2回じゃなく、“何度注意しても改善しない”とき、
「もう、どうしたらいいの?」と親の方が疲れてしまう。
でも、これ──
実は、子どもに限らず大人にも起きていることだったりする。
■ 忘れ物は「性格のせい」じゃない
「そそっかしい性格だから」
「だらしないんだよ」
「やる気がないから忘れるんだ」
……そう思われがちだけど、
脳の仕組みから見ると、実はかなり違う。
忘れ物をくり返す背景には、
意志の弱さや性格ではなく、“記憶の一時処理”に関わる脳の働きが関係しているんです。
■ カギを握るのは「海馬(かいば)」という場所
人の脳には、「海馬(かいば)」という器官があります。
ここは、いわば“短期記憶のメモ帳”。
今、どこに物を置いたか
さっき言われた用事
明日の予定
こうした一時的な情報を保持する場所が、この海馬です。
でも、この海馬──
ストレスや疲労、睡眠不足などで、簡単に処理能力が下がるという性質を持っている。
つまり、
前の日に準備しようと思ってたものを、朝にはすっかり忘れてた
持っていくはずだった資料を、机に置いたまま出勤した
──こういう“うっかり”は、
脳の疲れが引き起こした一時的な処理落ちとも言えるのです。
■ 「注意するほど逆効果」の落とし穴
さらに厄介なのは、
注意や叱責によって、かえって忘れ物が“強化”されてしまうケースです。
人は怒られると、感情を優先処理し、記憶処理が後回しになるという傾向があります。
怒られたときのことは覚えているのに、何を忘れていたかの方は記憶に残っていない──という現象、思い当たることはないでしょうか?
特に子どもにとっては、「また怒られる」「失敗しちゃった」という感情のインパクトが強く、
“忘れた”という事実よりも、“怒られた”という記憶ばかりが残る。
これが繰り返されると、
「どうせ自分はまた忘れるんだ」という無意識の諦めに繋がってしまい、
むしろ忘れ物が“習慣化”してしまう危険すらあるのです。
■ 忘れ物を減らすには「環境を変える」のが近道
「どうしたら忘れ物が減るのか?」
これ、たくさんの親が気になってるテーマだと思う。
でも残念ながら──
“注意を強めても、忘れ物は減らない”のが現実です。
忘れ物を減らすために必要なのは、注意力を鍛えることでも、叱ることでもない。
一番効果があるのは、
「行動と記憶を自動的に紐づける環境をつくること」です。
■ 脳は「条件反射」で動く生き物
たとえばあなたが外出するとき、
「玄関に立ったときにカギがないと不安になる」っていう感覚、ありませんか?
これは、「玄関=カギ確認」という記憶パターンが定着している証拠。
いちいち思い出さなくても、環境が“思い出すトリガー”になっているんです。
このように、「場所・動作・時間」など“外的な条件”を記憶とセットにしておくことで、忘れ物はぐっと減らせる。
■ 忘れ物を減らす具体的な仕掛けの例
- 「持ち物チェックリストを玄関に貼る」
→ 見るたびに記憶が呼び起こされる - 「前日にランドセルや通勤バッグを“出しっぱなし”にしておく」
→ 無意識に準備を始めやすくなる - 「学校の提出物は“靴の中”に入れる」
→ 出かけるときに必ず気づく(実際に子どもによく効く方法) - 「冷蔵庫に“朝やること”チェック表を貼っておく」
→ 視覚+ルーティンで“思い出し”を自動化できる
こういう環境づくりは、
“忘れたらどうしよう”と不安になる心を支えるだけじゃなく、
脳にとって負担の少ない“思い出し方”でもあるんです。
■ 親ができる“予防”は「怒らないこと」ではない
よく「怒らない子育て」と言われるけど、
それはあくまで“結果”であって、“目的”ではない。
大事なのは、怒らなくてもいい状況を作ってあげること。
忘れ物を責めるのではなく、
「どうしたら忘れにくくなるか」を一緒に考える姿勢が、
子どもにとって一番のサポートになる。
そしてこれは、子どもに限らず、大人にとっても同じこと。
「なぜ忘れたのか」を責めるより、
「どうすれば思い出せるようになるか」に意識を向ける方が、
ずっと建設的で、疲れない。
■ 忘れ物は“習慣”にもなる
ここで、もう一歩深く掘ってみたい。
忘れ物って、最初は「うっかり」だったかもしれない。
でも、何度も繰り返していくと──
“忘れること”そのものが習慣になっていくことがある。
たとえば、
提出物を忘れる→怒られる→焦って準備→また忘れる
お弁当箱を出し忘れる→怒られる→しぶしぶ出す→次の日また忘れる
こういうループが何度も起きると、
脳は「どうせまた忘れるんでしょ」という“学習”をしてしまう。
■ 脳は「予測」する生き物
脳は「反応」だけで動いているわけではない。
実は常に、「次に何が起きそうか」を予測して行動している。
つまり、
「自分は忘れやすい」という思い込みが定着すると、脳はそれを前提に動く。
「また忘れるだろう」という“予測通り”に行動してしまうわけです。
これが、「忘れ物がくせになる」原因のひとつ。
■ 親の声かけが“脳の予測”を決めてしまうこともある
「また忘れてるじゃん!」
「ほんとにだらしないね」
「昨日も言ったよね!?」
──この言葉たち、気をつけないといけない。
子どもが本当に受け取っているのは、「自分はどうせまた忘れる人なんだ」という“予測の種”かもしれないから。
親の言葉は、子どもの脳にとって“未来のシナリオ”のヒントになる。
だからこそ、忘れ物を減らすためには、「忘れない自分」になるヒントを与える言葉が必要なんです。
■ 「人を変えることは難しい。だから環境を変える」
ここで、今回のショート動画でも紹介した格言を紹介します。
「人を変えることは難しい。だから環境を変える。」
——ピーター・ドラッカー(経営学者)
ドラッカーは、組織マネジメントの世界でこう言いました。
「人の性格や意識を変えようとするのは非効率。
むしろ、その人が自然と行動できる“環境”を作る方が現実的だ」と。
これは、子育てにもぴったり当てはまる。
忘れ物をなくしてほしいなら、子どもを“変えよう”とするより、
忘れないで済む“仕組み”や“場所”を先に変える方がずっと楽なんです。
■ 忘れ物と向き合うときに大事なのは、“関係性の温度”
忘れ物は、誰にでもある。
でも、繰り返されるとイライラする。
注意しても直らないと、関係がぎくしゃくしてくる。
だからこそ、「忘れたこと」だけを見るのではなく、
その背景にある“脳のクセ”や“仕組みの欠落”に目を向けること。
それが、親としてできる本当のサポートになる。
■ 忘れ物と、どう付き合っていくか
忘れ物は、完璧にはなくせない。
それは、脳の構造がそうなっているから。
私たちは、人間である以上「抜ける」ことからは逃れられない。
でもだからといって、
「しょうがない」で終わらせる必要もない。
仕組みを変える。
環境を整える。
行動と記憶をセットにする。
そして、「また忘れてる!」ではなく、「どうすれば忘れにくくなるか」を一緒に考える。
これが、親にも子にも、そして自分自身にも優しいやり方だと思う。
■ 親として、そして人としてできること
子どもに限らず、大人にも忘れ物はある。
忙しさ、ストレス、気づかないうちに溜まっている“脳の疲れ”。
それは、誰もが抱えるもの。
「やる気がないからじゃない」
「気をつけてないからじゃない」
忘れ物が多い人に、そう伝えられる大人でいたい。
そして、自分自身に対しても。
「また忘れた…」と落ち込むより、
「そうならないように、工夫してみよう」と考えられる自分でありたい。
■ 最後に:ドラッカーの言葉をもう一度
「人を変えることは難しい。だから環境を変える。」
子どもも、大人も、職場でも家庭でも──
人が変わるのを待つのではなく、
人が変わりやすくなる環境をつくること。
忘れ物を責める前に、環境を見直す。
そして、「忘れなくて済む」ように、脳が動きやすい仕組みを整える。
その方が、ずっと楽で、ずっとやさしい。
■ 関連動画はこちら
🎥 ショート動画(YouTube)
🎥 TikTok版
https://www.tiktok.com/@nameless.match/video/7504119798507310343
※ 動画は30秒ほどで完結します。「忘れ物」のリアルと脳の仕組みを、ぎゅっと詰めてます。
■ おわりに
ここまで読んでくれて、ありがとうございました。
忘れ物に悩む人が、少しでも楽になりますように。
怒る前に、仕組みをつくる。
忘れる前に、思い出せる場所を置いておく。
そして、うまくいかない日も、「それでも大丈夫」って言える自分でありたい。
「ここでは語りきれなかった“裏の話”は、燃えかすマッチの記録で残しています。
→ ちょっとリアルすぎるけど、読みたい人はこちらへ」
🔗 https://match-kasu.hateblo.jp
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