第三者委員会が入ると、なぜ仕事が止まるのか
前回は、組合が関わった瞬間に
会議の空気や優先順位がどう変わるのかを書きました。
今回は、その先です。
第三者委員会や外部有識者が入ったとき、
なぜ教育委員会の動きが急に鈍るのか。
外からは見えにくい、
「止まる理由」を内側の感覚で整理します。
※本記事は筆者の実体験をベースにしていますが、
個人・学校・自治体を特定できないよう、
人名・役職・時系列・一部事実関係に脚色を加えています。
特定の人物や組織を告発する意図はありません。
「第三者を入れましょう」の一言
D(関係者)から、
こう提案されたのが始まりでした。
「第三者委員会を立ち上げてはどうでしょうか」
一見、最も真っ当な提案に見えます。
実際、透明性や公正性の観点では
正解に近い選択肢です。
ただ、その瞬間、
A(指導主事)は別のことを考えていました。
設置が決まった瞬間に起きること
第三者委員会の設置が決まると、
実務は一気に切り替わります。
- 新たな資料作成
- 過去記録の洗い出し
- 説明用の時系列整理
- 発言内容の精査
これらは、
通常業務に「上乗せ」されます。
人が増えるわけではありません。
動けなくなる理由①「勝手に進められない」
第三者が入ると、
現場判断で物事を進められなくなります。
- 調査範囲の確定
- 聞き取り方法
- 記録の扱い
すべて、
「委員会での合意」を待つ必要があります。
その結果、
即応性は確実に下がります。
動けなくなる理由②「言質を極端に避ける」
第三者委員会がある以上、
すべての発言は記録に残る前提になります。
Aは、
次のような指示を受けました。
「不用意な評価はしないでください」
事実確認すら、
表現に神経を使うようになります。
推測ですが、
後々の責任追及を想定すると、
慎重にならざるを得ないのだと思います。
動けなくなる理由③「通常業務が止まらない」
皮肉な点ですが、
第三者委員会が入っても、
国・県・議会対応は止まりません。
つまり、
- 通常業務
- 第三者委員会対応
この二つを、
同じ人数で回すことになります。
結果として、
どちらも遅れがちになります。
「第三者=万能」という誤解
外から見ると、
第三者委員会が入れば
一気に解決が進む、
と思われがちです。
しかし実際には、
- 設置までに時間がかかる
- 運営コストが高い
- 即効性は低い
という特徴があります。
これは、
制度の欠陥というより、
設計上の性質です。
内側にいたから分かる本音
A自身、
第三者委員会に反対だったわけではありません。
ただ、
少人数・多重業務の状態で
さらに重たい仕組みを乗せることに、
現実的な不安を感じていました。
結果として、
「嫌がっている」ように見える対応に
なってしまうのだと思います。
次につながる話
ここまでで、
- 人数が少ない
- 本業が別にある
- 組合対応が重なる
- 第三者委員会で動きが鈍る
という流れが見えてきたと思います。
次回は、
この状況が最終的に
どこにしわ寄せとして現れるのか。
現場の教員と子どもに何が起きるのか
そこを書きます。
シリーズ既刊
第1回:第三者介入を極端に嫌がる理由
https://shirutera.com/blog/blogs/third-party-intervention-in-education-board/
第2回:中核市でも1人か2人?いじめ担当指導主事の現実
https://shirutera.com/blog/blogs/bullying-officer-too-few/
第3回:指導主事の本業は、いじめ対応ではありません
https://shirutera.com/blog/blogs/real-work-of-school-supervisors/
第4回:ハラスメント相談が「人事案件」に変換される瞬間
https://shirutera.com/blog/blogs/harassment-becomes-personnel-issue/
第5回:組合が出てきた瞬間、空気が一変する
https://shirutera.com/blog/blogs/when-union-enters-the-room/
根拠・出典
- 地方自治法(第三者機関・附属機関)
- 地方教育行政の組織及び運営に関する法律
- いじめ防止対策推進法
- 各自治体 第三者委員会設置要綱(公開資料)