指導主事の本業は、いじめ対応ではありません
前回の記事では、
いじめ対応を担う指導主事が、
中核市であっても実質1人か2人という体制で
業務を回している現実を書きました。
では、その指導主事たちは、
日々いじめ対応だけをしているのか。
実際は、まったく違います。
今回は、
「指導主事の本業とは何か」
その内側の感覚を、体験をもとに整理します。
※本記事は筆者の実体験をもとに構成していますが、
個人・学校・自治体を特定できないよう、
人名・役職・時系列・一部事実関係に脚色を加えています。
特定の人物や組織を告発する意図はありません。
いじめ対応は「割り込み仕事」
A(指導主事)が1日の予定を立てていると、
そこに突然、電話が入ります。
「学校でいじめの相談がありまして……」
この時点で、
予定はほぼ崩れます。
ただし重要なのは、
いじめ対応が、あらかじめ予定された仕事ではない、
という点です。
多くの場合、
いじめ対応は「割り込み仕事」として発生します。
あらかじめ決まっている“本業”
では、予定に入っている仕事は何か。
例えば、こんな業務です。
- 国からの調査・報告への対応
- 県からの通知内容の整理と展開
- 議会対応に向けた資料作成
- 首長部局からの照会への回答
- 定例会議用の説明資料づくり
これらは、
締切が明確に決まっており、
遅れると確実に問題になります。
一方で、
いじめ対応は「急ぎではあるが期限が見えにくい」仕事です。
どちらが優先されるか
ある日、
Aは、いじめ対応で学校とやり取りをしていました。
そこへ、上司から声がかかります。
「この調査、今日中にまとめてほしい」
国から降りてきた調査で、
締切はその日の夕方でした。
Aは一瞬迷います。
ただ、対応しなければならない優先順位は明白でした。
結果として、
いじめ対応は後回しになります。
これは、
「いじめを軽視している」からではありません。
遅らせられない仕事が、他にあるからです。
「子ども最優先」と現実のズレ
教育委員会は、
理念としては「子ども最優先」を掲げています。
しかし、実務では、
議会・国・県への説明責任が
常に背後にあります。
Aが最初に教えられた言葉があります。
「議会で説明できない仕事は、やっていないのと同じだ」
この感覚が、
日々の業務判断に影響します。
いじめ対応が遅れる理由
外から見ると、
「なぜすぐ動かないのか」
と感じるかもしれません。
内側にいると、
こうした事情が重なっています。
- 担当者が少ない
- 兼務が多い
- 本業の締切が動かせない
結果として、
いじめ対応は、
どうしても後手に回りやすくなります。
指導主事自身も苦しんでいる
A自身、
「こんなやり方でいいのか」と
何度も思いました。
ただ、
一人で抱えられる量には限界があります。
丁寧にやろうとするほど、
仕事は積み上がり、
評価されにくい。
前回の記事で触れた
少人数体制の問題は、
ここにも直結しています。
次につながる話
ここまで読むと、
「では、いじめ対応やハラスメント対応は、
どう扱われていくのか」
という疑問が出てくると思います。
次回は、
その疑問に直結する話です。
ハラスメント相談が、
どのように扱われ、
なぜ「人事案件」に置き換わっていくのか。
具体的な場面をもとに、
その流れを書いていきます。
シリーズ第1回
教育委員会が第三者介入を極端に嫌がる理由を、元職員の体験から語る
https://shirutera.com/blog/blogs/third-party-intervention-in-education-board/
シリーズ第2回
中核市でも1人か2人?いじめ担当指導主事の現実
https://shirutera.com/blog/blogs/bullying-officer-too-few/
根拠・出典
- 地方教育行政の組織及び運営に関する法律
- 地方自治法(議会・説明責任)
- いじめ防止対策推進法
- 文部科学省 各種調査・通知資料
- 各自治体 教育委員会事務分掌規程(公開資料)