親が不安定なとき、子どもは相談しなくなる|「守ろうとした結果」のケース


この家庭の保護者は、
とても熱心でした。

学校への連絡もこまめ。
子どものことを、よく見ています。

それでも、
子どもは誰にも相談しなくなりました

本記事について

本記事は、筆者が小学校教員として関わったケースをもとに構成しています。
学校では、児童の行動や心理的変化が見られた場合、
担任単独で判断せず、管理職・養護教諭・SC・SSWを含むケース会議を行います。

本記事は、そうしたケース会議および日常的な関わりの中で得られた知見をもとにしています。
特定の家庭や個人が特定されないよう、状況は一部変更・再構成しています。

児童Dの学校での様子

児童Dは小学6年生。
学力・生活態度ともに問題なし。

ただし、

・困っても助けを求めない
・一人で抱え込む
・限界まで我慢する

そういうタイプでした。

表に出なかったSOS

学校でトラブルが起きても、
児童Dは報告しません。

後から聞くと、

「言ってもどうにもならないと思った」

この一言に、
すべてが詰まっていました。

家庭の背景

保護者は、
慢性的な不安を抱えていました。

・将来への心配
・学校への不信
・失敗への恐れ

それ自体は、珍しいことではありません。

子どもが学習してしまったこと

児童Dは、
こう学習していました。

「困りごとを話すと、
 お母さん(お父さん)が余計に不安になる」

つまり、

相談しないことが、配慮になっていた

親を守る役割を引き受けた子ども

この時点で、
親子関係は逆転しています。

・親が安心できるように
・心配を増やさないように

子どもが調整役を担っていました。

ケース会議で共有された視点

SCから出た言葉は、
かなり重いものでした。

「この子は、もう“頼らない選択”をしています」

甘えないのではありません。
諦めている。

親の善意が裏目に出る構造

保護者は、
子どもの話を真剣に聞いていました。

ただし、

・過剰に心配する
・先回りして解決しようとする
・感情が揺れる

その様子を、
子どもはよく見ています。

子どもは、親の感情に敏感すぎる

特に小学生高学年は、
親の表情や声色を正確に読み取ります。

だからこそ、

「これ以上は言わないほうがいい」

と判断する。

学校と家庭だけでは限界だった

このケースでも、
担任や保護者だけでは
構図を変えられませんでした。

理由は単純です。

当事者同士だから

外部の専門家が入って初めて起きた変化

外部の心理職が入ったあと、
児童Dはこう話しました。

「ここなら、心配されすぎない」

この感覚が、
相談の第一歩でした。

子どもが安心するのは「解決」ではない

子どもが求めているのは、

・正解
・説得
・指導

ではありません。

感情を持ったままで、置いておける場所です。

親のメンタルケアは、子どものメンタルケアでもある

このケースが示しているのは、
明確な事実です。

・親が不安定だと
・子どもは黙る

卵が先か、鶏が先か。
その議論に意味はありません。

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https://shirutera.com/blog/blogs/family-no-daily-conversation-case/