気持ちはあった。でも言葉がなかった|語彙不足が誤解を生んだ低学年のケース
この子は、
何も考えていないように見えました。
でも実際は、
考えていなかったのではありません。
言葉がなかった。
本記事について
本記事は、筆者が小学校教員として関わったケースをもとに構成しています。
学校では、児童の行動や心理的な変化が見られた場合、
担任だけでなく、管理職・養護教諭・SC・SSWを交えたケース会議を行います。
本記事の内容は、そうしたケース会議および日常的な関わりの中で得られた知見をもとにしています。
特定の児童・家庭が識別されないよう、状況は一部変更・再構成しています。
児童Gの学校での様子
児童Gは小学2年生。
・注意されると黙る
・聞かれても「べつに」と答える
・表情が固まりやすい
教師側から見ると、
「反省していない」
「考えていない」
と見えやすい状態でした。
家庭での様子
家庭でも同じでした。
・どう思ったの? → わからない
・嫌だった? → べつに
・困ってた? → しらない
保護者は、
「本音が分からない」
と感じていました。
ケース会議で出た最初の仮説
当初、会議ではこう整理されました。
・感情表現が苦手
・内向的な性格
・自己主張が弱い
しかし、
SCが一つ問いを投げました。
「この子、語彙は足りていますか?」
語彙がないと、気持ちは存在できない
低学年では、
・感情はある
・でも名前がない
ということがよくあります。
結果として、
・説明できない
・説明できないから誤解される
・誤解されるから話さなくなる
この循環に入ります。
誤解が重なった結果
児童Gは、
次第にこう学習していました。
「どうせ言っても、伝わらない」
「うまく言えないなら、言わないほうがいい」
これは、
メンタル面ではかなり危険な学習です。
学校と家庭の限界
教師も保護者も、
毎日関わっています。
それでも、
・気持ちを分解する
・言葉に置き換える
この作業を
日常会話だけでやるのは難しい。
そこで出たのが「言葉の遊び」
ケース会議で提案されたのは、
学習ドリルではありませんでした。
言葉を使わざるを得ない遊び。
導入されたのが「ひらがじゃん」
家庭で導入されたのが、
ひらがなを使った言葉づくりゲーム
「ひらがじゃん」です。
・勝ち負けがある
・文字を選ぶ必要がある
・自然に言葉が出る
低学年でも、
参加できます。
実際に起きた変化
最初は、
短い言葉ばかりでした。
でも次第に、
・それはいや
・それはちがう
・かなしかった
少しずつ、
感情に近い言葉が出始めました。
教育的に見た、このゲームの強さ
「ひらがじゃん」は、
・語彙を増やす
・言葉を組み立てる
・間違えても失敗にならない
という特徴があります。
これは、
低学年のメンタルケアと相性がいい。
大人が教え込まなくていい
重要なのは、
教えないことです。
・正しい言葉
・きれいな表現
を求めると、
また黙ります。
遊びの中で、
勝手に増えるのが理想です。
ひらがな麻雀 ひらがじゃん(牌バージョン)
気持ちは、あとから言葉になる
このケースで共有された結論は、
とても明確です。
・感情がないのではない
・言葉が追いついていない
低学年ほど、
ここを見誤りやすい。
前の記事はこちら
家庭で唯一、機能したのはボードゲームだった
https://shirutera.com/blog/blogs/haa-game-only-worked-family-case/