ハラスメント相談が「人事案件」に変換される瞬間
前回までの記事で、
指導主事の人数の少なさ、
そして本業が何か、という話を書いてきました。
今回は、その延長線上にある話です。
ハラスメントの相談が、
どのように「人事案件」へと姿を変えていくのか。
内側にいないと見えにくい、
判断が切り替わる瞬間を、体験をもとに書きます。
※本記事は筆者の実体験をベースにしていますが、
個人・学校・自治体を特定できないよう、
人名・役職・時系列・一部事実関係に脚色を加えています。
特定の人物や組織を告発する意図はありません。
「これはハラスメントだと思います」
最初の相談は、B(教員)からでした。
「管理職の発言が続いていて、
正直、ハラスメントだと思っています」
A(指導主事)は、
内容を聞いた時点で、
少なくとも事実確認が必要な案件だと感じました。
発言の内容、
頻度、
周囲の状況。
単なる行き違いでは済まない、
そういう手応えがありました。
最初の提案は「調査」
Aは上司に報告し、
関係部署で打ち合わせが持たれました。
Aの提案はシンプルでした。
「一度、事実関係を整理して、
必要であれば調査を入れた方がいいと思います」
この時点では、
誰も反対しませんでした。
変化は人事担当の一言から始まる
しばらく沈黙があり、
C(人事担当)がこう言いました。
「異動で環境を変える、
という選択肢もありますよね」
場の空気が、
わずかに変わったのを覚えています。
調査か、
人事か。
論点が、
少しずつずれていきました。
なぜ「人事で収める」話になるのか
人事異動という選択肢には、
明確なメリットがあります。
- すぐに実行できる
- 表沙汰になりにくい
- 記録を最小限にできる
推測ですが、
業務量が逼迫している状況では、
「確実に終わる方法」が
無意識に選ばれやすいのだと思います。
調査は、
時間も人手もかかります。
しかも、結果がどう転ぶか分からない。
「問題を解決する」のではなく「静かに終わらせる」
会議の終盤、
Cがこうまとめました。
「今回は、人事で様子を見る方向でいきましょう」
Aは違和感を覚えました。
被害を訴えたBの声は、
この時点で、
議題の中心から外れていました。
記録が残らないという現実
人事異動で処理される場合、
詳細な調査報告書は作られません。
結果として、
組織として
「ハラスメントがあった」という記録は残らない。
これは、
再発防止の観点から見ると、
かなり致命的です。
内側にいたから分かる限界
A自身、
この判断が正解だとは思っていませんでした。
ただ、
少人数で、
締切に追われ、
第三者介入も避けたい状況では、
こうした判断が繰り返されやすい。
これは個人の資質の問題というより、
運用の問題だと感じています。
次につながる話
ここまで読むと、
「では、組合が絡むとどうなるのか」
という疑問が出てくると思います。
次回は、
ハラスメント案件に
組合が関わった瞬間、
委員会の対応がどう変わるのか。
そのリアルを書きます。
シリーズ第1回
教育委員会が第三者介入を極端に嫌がる理由
https://shirutera.com/blog/blogs/third-party-intervention-in-education-board/
シリーズ第2回
中核市でも1人か2人?いじめ担当指導主事の現実
https://shirutera.com/blog/blogs/bullying-officer-too-few/
シリーズ第3回
指導主事の本業は、いじめ対応ではありません
https://shirutera.com/blog/blogs/real-work-of-school-supervisors/
根拠・出典
- 地方教育行政の組織及び運営に関する法律
- 労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)
- 地方公務員法(服務・人事)
- 文部科学省 学校におけるハラスメント防止関連資料
- 各自治体 教育委員会事務分掌規程(公開情報)