日常会話が消えた家庭で起きたこと|誤解は、静かに積み重なる
家庭に問題があるようには、見えませんでした。
暴言もない。
暴力もない。
ただ、
会話がほとんどなかった。
今回は、
「何も起きていない家庭」に見えたケースです。
本記事について
本記事は、筆者が小学校教員として関わったケースをもとに構成しています。
学校では、児童の行動や心身の変化が見られた場合、担任だけで判断せず、
管理職・養護教諭・SC・SSWを交えたケース会議を行います。
本記事の内容も、
そうしたケース会議および日常的な関わりの中で得られた知見をもとにしています。
特定の個人が識別されないよう、状況は一部変更・再構成しています。
児童Cの学校での様子
児童Cは小学4年生。
授業態度は一見、問題なし。
ただし、
・指示を過剰に確認する
・間違いを極端に恐れる
・小さな失敗で固まる
そんな特徴がありました。
家庭での様子は「静か」
家庭訪問や保護者面談で感じたのは、
とにかく静かな家庭でした。
・必要な会話だけ
・雑談がない
・感情のやりとりがない
保護者自身も、
「特に困っていない」
と話していました。
日常会話がないことの問題点
ここで重要なのは、
日常会話がない=不仲
ではない、という点です。
問題は、
ズレが修正されない
ことです。
子どもが抱えていた誤解
後のケース会議で明らかになったのは、
児童Cがこんなふうに考えていたことでした。
「失敗すると、がっかりされる」
「迷惑をかけると、嫌われる」
誰かに言われたわけではありません。
ただ、
確認する機会がなかった。
親が抱えていた別の前提
一方、保護者はこう考えていました。
「口数が少ないのは、成長」
「自立してきた証拠」
ここに、
大きなズレがありました。
会話がないと、修正が起きない
日常会話がある家庭では、
・誤解はすぐ修正される
・冗談で流れる
・言い直しができる
しかし、この家庭では、
ズレがそのまま積み重なりました。
ケース会議で見えた決定打
SCが指摘したのは、
とてもシンプルなことでした。
「この家庭には、確認の場がありません」
責任論ではありません。
機能の話です。
家庭は「組織」でもある
家庭は感情の集まりであると同時に、
情報共有の組織でもあります。
日常会話は、
最も低コストで機能する
情報調整ツールです。
会話を取り戻すために必要だったこと
このケースで取られた対応は、
・深刻な話し合い
・説教
・指導
ではありませんでした。
一緒に遊ぶ時間
それだけです。
会話は「目的」ではなく「副産物」
この家庭では、
ルールのある遊びを導入しました。
すると、
・勝ち負けの話
・笑い
・軽い不満
自然に言葉が出てきました。
会話は、
無理に作るものではありません。
何も起きていない家庭ほど、注意が必要
問題が顕在化した家庭より、
静かな家庭のほうが、
深刻なケースもあります。
理由は簡単です。
気づきにくいから。
前の記事はこちら
担任は悪くない。でも噛み合っていなかった
https://shirutera.com/blog/blogs/teacher-mismatch-second-opinion-case/