中核市でも1人か2人?いじめ担当指導主事の現実


教育委員会の対応について、
「どうしてこんなに遅いのか」
「なぜ踏み込んだ対応ができないのか」
そう感じたことがある人は多いと思います。

前回の記事では、
教育委員会が第三者介入を極端に嫌がる理由を、
内側の体験から整理しました。

今回は、その前段階にあたる話です。
そもそも、いじめ対応を担っている人は、
どれくらいの人数で業務を回しているのか。

ここを知ると、多くの疑問がつながってきます。

※本記事は筆者の実体験をもとに構成していますが、
個人・学校・自治体を特定できないよう、
人名・役職・時系列・一部事実関係に脚色を加えています。
特定の人物や組織を告発する意図はありません。

「いじめ担当って、何人いるんですか?」

ある日、C(別業務を担当する職員)から、
こんな質問をされました。

「いじめ担当って、何人いるんですか?」

A(指導主事)は、少し間を置いて答えました。

「実質、自分ひとりですね」

Cは一瞬、聞き返しました。

「え、中核市ですよね?」

はい、中核市です。
人口規模も学校数も、決して小さくありません。

実態は「専任1人」ではなく「兼務1人」

誤解されやすい点ですが、
いじめ担当指導主事は、
いじめだけを扱う専任ポストではありません。

Aが同時に抱えていた業務は、例えば次のようなものでした。

  • いじめ対応
  • 不登校対応
  • 生徒指導全般の相談
  • 学校からの突発的な問い合わせ
  • 国や県から降りてくる調査・報告対応

いじめ対応は、その中の一つに過ぎません。
しかも、優先順位が常に最上位になるとは限らない。

同時に重なると、普通に回らない

ある時期、
複数の学校から、いじめに関する相談が同時に入りました。

それぞれ内容も背景も違います。
本来であれば、
時間をかけて一件ずつ向き合う必要がある案件でした。

ところが、その最中に、
国からの調査依頼が届きます。

締切は短く、
対応しなければ確実に上から指摘が入る。

結果として、
「今すぐ終わらせないといけない仕事」が
どうしても優先されてしまいます。

これは、やる気や姿勢の問題ではありません。
単純に、物理的に回らないのです。

「専門家が対応している」という誤解

外から見ると、
「いじめ担当なのだから、専門家なのだろう」
と思われがちです。

しかし実際には、
専門資格が求められているわけでもなく、
長期的に専門性を蓄積する前提でもありません。

選ばれる基準は、
生徒指導経験がある、という程度です。

推測ですが、
専門性を高めるよりも、
短期間でローテーションできる配置のほうが、
制度として扱いやすい、という判断が
優先されているように感じました。

「対応できない」のではなく「限界がある」

SNSなどで、
「まともな対応ができるわけがない」
という声を見かけることがあります。

その表現は、決して大げさではありません。

  • 担当者の人数
  • 兼務の多さ
  • 業務量の多さ

これらを考えると、
丁寧な対応を継続するのは、かなり厳しい。

これは個人の問題ではなく、
体制の問題です。

内側にいたからこそ感じた違和感

A自身、
「せめてもう1人いれば」と
何度も思いました。

しかし、人を増やすには予算が必要で、
予算は議会案件になります。

結果として、
現場は少人数のまま、
業務だけが積み上がっていく。

前回の記事で触れた
「第三者介入を嫌がる判断」も、
この少人数体制と無関係ではありません。

次につながる話

いじめ対応がうまく進まないとき、
「教育委員会は何もしていない」と
感じてしまうのは自然なことです。

ただ、その背景には、
少人数で限界まで抱え込んでいる現実もあります。

次回は、
その指導主事たちが、
実際には何を「一番の仕事」として抱えているのか。
いじめ対応より優先されがちな業務について、
もう一歩踏み込んで書いていきます。


シリーズ第1回はこちら

教育委員会が第三者介入を極端に嫌がる理由を、元職員の体験から語る
https://shirutera.com/blog/blogs/third-party-intervention-in-education-board/


根拠・出典

  • 地方教育行政の組織及び運営に関する法律
  • いじめ防止対策推進法
  • 文部科学省 いじめ問題に関する施策資料
  • 各自治体 教育委員会事務分掌規程(公開資料)