この記事のゴール=不登校に関する悩みを持っている、あなたとあなたの周囲の人が幸せになること

この記事では、不登校に関わるすべての人──子ども・保護者・教員に向けて、心と行動の支えになる情報をお届けしています。
本編は長文ですが、「今すぐ使える声かけテンプレート」もご用意していますので、読むのがしんどいという方は、まずはこちらをご覧ください。

📄 テンプレートを見る

第1章:不登校は「特別なこと」じゃない──増加する背景と現場のリアル

「学校に行くのが当たり前」と思っていた時代は、もう過去のものになりつつあります。
現在、日本全国で不登校の児童・生徒はおよそ30万人を超えています(文部科学省調査)。
これは、クラスに1人や2人いるのが“当たり前”の時代に入ったということです。

でも、ニュースで数字だけを見ても、実感が湧かない人も多いかもしれません。
現場で子どもたちと日々向き合ってきた経験からも、「ある日突然、来られなくなる」という事例は決して珍しくありません。

「不登校になる子がいなかった」──それは、たまたまかもしれない

僕自身、担任をしていたクラスでは不登校になる子が一人もいませんでした。
何人もの子が、かつて不登校だった状態から教室に戻ってきたこともあります。
でも、それは“正しい対応をしたから”ではなく、偶然タイミングが合っただけかもしれないということも、正直に理解しています。
しかし、何も考えずにこの結果が生まれたとも考えていません。
ここでは、僕が意識して取り組んできたことを紹介することで一人でも多くの人の役に立ちたいという願いを語ります。

不登校というのは、「本人のがんばり」や「先生の指導力」だけでどうにかできるものではありません。
そこには、家庭の状況・学校の空気・人間関係・制度のギャップ・社会的なプレッシャーなど、さまざまな要因が絡み合っています。

「学校に行かない」ことを“悪”と決めつけないでください

特に日本では、「学校に行く=良いこと」「行かない=悪いこと」という価値観が根深くあります。
でもそれは、学校が絶対的な正義であるという思い込みにすぎません。
学校で働いていた僕が言うのも変な話ですが、「子どもは学校へ行く権利がある」だけです。
「行かない自由」も持っています。

子どもが学校に行かないとき、それは「逃げ」ではなく「自分を守るための行動」であることが多いのです。

「不登校」という言葉の中に、“生き抜こうとする力”がある

教室という場所に入ることができないほど、心も体も限界を迎えている。
それでも、子どもは「学校に行かない」という選択を通じて、なんとか自分を保とうとしているのです。

この章で一番伝えたいのは、「不登校は決して異常でも甘えでもない」ということ。
誰にでも起こりうる。
だからこそ、正しく理解し、支える側の視点もアップデートしていく必要があります。

第2章:「不登校の脳」に起きていること──科学的に見た3つの変化

不登校は「気持ちの問題」ではありません。
最近の研究では、ストレスによって脳や神経の働きに明確な変化が起きていることが分かってきています。

ここでは、「なぜ子どもが学校に行けなくなるのか」を、脳科学の視点から3つのポイントに分けて解説します。

① 扁桃体の過敏化──“小さなこと”でも大きな不安に感じる

扁桃体は「恐怖」や「不安」を司る脳の部位です。
長期間のストレスやプレッシャーが続くと、この扁桃体が過敏になり、ごく小さな刺激にも強く反応するようになります

たとえば、「先生がちょっと怒った」「友達に無視された気がする」
そんな出来事でも、脳が「命の危機レベル」に捉えてしまうのです。

これは意志の強さや性格の問題ではなく、脳が身を守ろうとする“自然な反応”です。

② 前頭前野の機能低下──「考える力」が働かなくなる

前頭前野は「論理的に考える」「感情をコントロールする」「自分を客観的に見る」といった力を担っています。
でも、ストレスが過剰になるとこの部分の働きが低下し、自分の状態を冷静に判断できなくなるのです。

結果として、「なんで行けないのか自分でもわからない」「泣いてばかり」「怒りっぽくなる」などの状態が起こります。

「理由が説明できない=わがまま」と捉えられがちですが、脳の状態から見れば当然のことです。

③ 自律神経の乱れと「演技」のような表現

ストレスによって交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、体がだるい・眠れない・急に泣く・腹痛や頭痛が続くなど、身体症状が出やすくなります。

また、言葉だけでうまく気持ちを伝えられない子は、表情や声色、動作で「しんどさ」を伝えようとすることがあります。
その姿が一見「演技」に見えることもありますが、それはその子なりのSOSの表現方法なのです。

「学校に行けない」は、脳と心からの“ブレーキ信号”

こうして見ていくと、不登校の背景には
「怖い」→「考えられない」→「動けない」という連鎖があることがわかります。

つまり、学校に行けない状態とは、脳が「今はもう限界」と教えてくれているサインなのです。

それを「甘え」「サボり」と決めつけてしまえば、本当の意味での回復は遠のいてしまいます。

第3章:「安心・自信・自由」が人を支える──社会全体で守る“3つの権利”

不登校の問題に向き合うとき、最も大切になるキーワードがあります。
それが、「安心・自信・自由」という3つの権利です。

これは、子どもの人権教育を行っている団体「CAPセンター・JAPAN」が提唱している基本概念であり、
あらゆる人が生まれながらに持つ権利でもあります。

この3つが揃っていると、人は自然に笑い、話し、動けるようになります。
でも逆に、このどれかが欠けると、人は行動する力を失い、無力感や不安に襲われてしまうのです。

不登校のまわりには「安心・自信・自由」が足りていない

不登校になった子どもはもちろん、そのまわりにいる大人──保護者や教員もまた、この3つの権利を奪われた状態になっていることが少なくありません。

こうした状態では、誰もが孤立してしまい、「なんとかしたいのに、何もできない」という悪循環に陥ってしまいます。

「人権は誰かのもの」ではなく、「みんなのもの」

人権というと、どこか「守るべき存在がいて、それを支える人がいる」という構図に見えがちです。
でも本当は、すべての人が、安心・自信・自由を持っていてよいし、お互いにその権利を守り合うことができる社会であるべきなのです。

子どもが不登校で悩んでいる時、支える大人にも安心して考える時間や場が必要です。
教員が「うまく対応できない」と感じている時も、その先生自身が「自信を持てる関係性」が必要です。

つまり、不登校の問題は子どもひとりの問題ではなく、社会全体の「人権のバランスの崩れ」として考える必要があるのです。

支え合える社会をつくる、その一歩として

誰かを責めたり、「どうしてこうなった」と原因を探したりする前に、今、目の前の人に「安心・自信・自由」はあるかを問い直してみてください。

子どもも、大人も、先生も──誰もが「守られている」と感じられる場所があれば、もう一度前に進む力を取り戻すことができます

不登校という現象を、社会全体の「気づきのチャンス」に変えていく。
そんな価値のある変化を、ここから始めていきませんか。

第4章:「学校に行かないと困る」──3つの不安とその対策

「今は休ませた方がいい」
そう頭ではわかっていても、不登校が長引いてくると、不安がどんどん大きくなっていくものです。

保護者の方なら、こんな思いが浮かぶかもしれません。

どれも自然な感情ですし、不安を感じること自体を否定する必要はありません
ただし、必要なのはその不安に飲み込まれるのではなく、具体的にどう乗り越えるかを考える視点です。

不安①:学力の遅れ──「脳が回復してから」で十分間に合う

不登校の子どもたちの多くは、「わかっているのに手がつけられない」という状態にいます。
この時期に無理に学習をさせると、ますます自信を失わせてしまうこともあります。

対策としては、まず“安心を感じられるツール”を使うこと。
タブレット学習ややさしい復習教材など、「自分のペースで・誰にも見られず・短時間だけ」という条件を満たすと、再び学びへの関心が戻ってきます。

▶ 自宅学習の工夫とおすすめツールについては、こちらの記事でも詳しく紹介しています。

また、家族と一緒に「クイズ番組を見る」「読み聞かせを楽しむ」など、間接的な学びの再起動も大きな助けになります。

不安②:生活リズムの乱れ──「体を動かすスイッチ」を作る

昼夜逆転や運動不足は、心の回復力を下げてしまいます。
でも、朝起きることだけをゴールにしないようにしましょう。

たとえば、「午後3時になったら散歩に出る」「お気に入りの音楽を聴きながら洗濯を干す」など、“起きる意味”を身体に覚えさせていくことが、回復にはとても有効です。

大事なのは、「リズムを整える=登校準備」ではなく、“安心して動ける体を作る”ための準備だと考えることです。

不安③:進路や将来──今は“生きのびる”ことが一番の投資

不登校になったからといって、進学や就職の道が閉ざされるわけではありません。
通信制高校、フリースクール、高卒認定など、今の社会は「別ルート」もどんどん広がっています

「このままじゃ人生が終わる」なんてことは絶対にありません。
だからこそ、まずは“今ここにいる自分”を守ることが、未来への一番の投資になるのです。

「学校に戻す」ことだけがゴールじゃない

支援の場面でよく聞かれるのが、「いつになったら学校に戻れますか?」という質問です。
でも大切なのは、その子が“学校に戻れる状態になること”ではなく、“安心して生きていける状態”になることです。

もし学校がその場であればOK。
でも、家庭・地域・フリースクール・オンラインなど、居場所や学びの場は1つじゃないという前提に立つことで、もっと穏やかに支援ができるようになります。

焦らなくても大丈夫。
子どもが動き出すのは、「自分が安心してもいい」と思えた瞬間なのです。

第5章:「自分にできること」を見つける──保護者・教員・本人のための実践Tips

不登校を前にしたとき、「何をすればいいのか分からない」と感じる人は多いはずです。
でも、すべてを変える必要はありません
まずは、それぞれの立場で「今すぐできること」から始めてみましょう。

🔹 保護者にできること

🔹 教員にできること

🔹 本人にできること

🌱 みなさん共通に大切にしてほしい視点

不登校は、制度やルールの外側で起きている“個別の命のサイン”です。
マニュアルや数字では測れない、その子だけのSOSがそこにはあります。

だからこそ、「制度」からいったん離れて、「今、目の前のその人」を大切にする視点が何よりも必要です。

それはきっと、あなたやあなたの周囲の人の「安心・自信・自由」を取り戻すことにもつながっていくはずです。

第6章:「今、つらい」と思っているあなたへ──このページを開いてくれたあなたに伝えたい言葉

このページを読んでくれているあなたは、もしかしたら今、とてもつらい気持ちの中にいるかもしれません。

「学校に行けない自分はダメなんじゃないか」
「みんなに迷惑をかけてる気がする」
「このまま、何もできないまま大人になるのかな」

そんなふうに思っていたら、どうかこの言葉を伝えさせてください。

「行けないこと」は、逃げじゃない。

あなたが今、学校に行けないのは、逃げたからじゃありません。
むしろ、がんばりすぎて、体と心が止まってしまったからです。

それは、「弱さ」じゃない。
自分を守るために、ちゃんとブレーキを踏めた勇気なんです。

「何もできてない」は、ほんとうじゃない。

休んでる間にも、あなたはちゃんと回復しています。
今すぐ目に見える変化はないかもしれないけど、水の下で根っこが育っているみたいに、
あなたの中ではちゃんと力が育っています。

ベッドから起きること、顔を洗うこと、ごはんを食べること。
そのどれもが、すごくすごく大切な「生きる力」です。

「こんな経験、無駄なんじゃないか」と思っても。

いつかこの経験は、誰かの力になる日がきます。
今は信じられなくても、あなたが味わっている気持ちは、未来の誰かを支える優しさに変わります。
あなたがここに居てくれることが大切なんです。

だから、どうか焦らないでください。
今は「前に進む」よりも、「ちゃんと立ち止まる」ことの方が大切な時もあるのです。

「休むこと」=「生きること」

休むことは、止まることじゃありません。
それは自分の命を大事にしている、すごく大事な行動です。

あなたには、安心して生きていい権利があります。
自分のペースで、自分のタイミングで、また動きたくなったときにでいいんです。

その日が来るまで、ちゃんと休んでいい。
ちゃんと守られていい。
あなたには、その価値があります。

巻末特典:安心を届ける声かけと言葉──無料テンプレート配布中

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ただ、ここまで全部読むのがしんどい…という方もいるかもしれません。

そこで今回の内容をもとに、すぐに使える形でまとめた「声かけテンプレート」を無料で配布しています。
保護者・教員・本人それぞれに向けた、言葉選びの具体例や応援メッセージが詰まっています。

📄 テンプレートに収録している内容

どれも今すぐ使えるA4サイズのPDF形式で、プリントや共有も可能です。
拡散、再利用も可能ですが、一声かけてくれると嬉しいです。
連絡先は下の公式LINEか各SNSのDMまで。
不登校に関するご相談も受け付けていますが、最大48時間程度の時間をいただく場合があります。

▼ テンプレートの配布はこちら
下のボタンでLINE友だち登録して「不登校テンプレ」という合言葉を入力してください。
ちなみに、普段はBOT運用してますので、特別な問いかけがない限り応答は自動返答です。
お気軽にご登録ください。月に1回、発信記事まとめをメルマガのように配信する予定です。
テンプレだけ受け取ってすぐに退会していただいても全く問題ありません。
たくさんの方にご利用いただけることが一番の望みです。

公式LINE・無料テンプレートはこちら

「安心・自信・自由」は、子どもにも大人にも必要。
一人ひとりがその権利を取り戻せるように──
小さな支えの言葉から、はじめてみませんか。